たまいど。- 特殊性癖趣味の絵と小説 -

――本日最後のイリュージョンは、ヘビ年のはじまりにふさわしい変体ショーをお見せいたします!――  会場にナレーションの声が響き渡る。  ホテルのワンフロアを貸切で開催されているシークレット・イリュージョンパーティ。会員同士の新年の交流のために開催されている余興の、最後のひとつがこれから始まる。  軽やかな音楽とともに、艶やかなメタリックピンクのキャットスーツを身に着けた、小柄な女の子がステージに笑顔で登場する。その後ろからは、こちらはグロスブラックのキャットスーツ姿の女の子が2人、何かを掲げながら最初の女の子の後ろをついていく。2人が一緒に掲げているのは、褐色の大きな作り物のヘビ。大きく口を開けた外側だけの筒状で、ヘビの鯉のぼりといったところだ。  ピンク色の女の子がステージの中央で軽快にステップを踏み、その周りを2人の黒子が、ヘビを掲げぐるぐると踊る。音楽が変わり、作り物のヘビはピンクの子の前に置かれ、黒い2人の女の子は退場していった。そのヘビは、全長が3メートル位はありそうな半透明のビニールのようで、女の子がすっぽり入りそうなくらい大きな口を開け、つぶらなガラス玉の瞳をつけた、お世辞にもリアルとはいえない代物である。  ピンクの子が、自分の前に置かれたヘビの頭を掴んで持ち上げて、観客へむけてそれが作り物であることをアピールする。

【挿絵】スネーク・TF・エスケープ1

――さあ、大蛇の前にかわいい女の子が一人。果たして何が起きるのか!?―  ナレーションが声を合図に、ヘビを手に持った女の子がパフォーマンスを始める。  両手で掴んでいるビニールのヘビが、突然暴れ出したかのように動き出す。もちろん女の子が動かしているのだが、ヘビが自分の意思で動いているかのよう見える。手に持ったヘビを右に左に振り回し、胴体が大きく波打つように床を跳ねる。観客にはまるで、女の子が暴れまわるヘビを必死で押さえ込もうとして、ヘビの頭を何とか掴んでいるようにしか見えない、まったく見事なパフォーマンスだ。  ステージ上を所せましと走り跳びまわり、ライトアップされた舞台の上で、ピンク色と褐色に輝く2体が絡みあう様は、激しい情愛の踊りを踊っているようだ。やがて、女の子は息を切らしもうダメだ、というようにステージの中央に倒れこむと、手に掴んだビニールのヘビの大きく開いた口に、自分の両足をスルリと入れる。ヘビが女の子を足の先から飲み込み始めたように。 ――ああ、大変です。とうとうヘビに捕まってしまいました。はたして彼女は脱出できるのか!?はたまたかなわず、ヘビに食べられてしまうのか!?――  いささかワザとらしいナレーションが、状況の説明を入れる。  足から飲みこみはじめたヘビから抵抗するように、口を掴んで脱出しようと、でも実は、じわじわと自分の方へ引き上げるように、女の子のパフォーマンスは続く。下半身をビニールのヘビの中に飲み込まれ、偽りの苦悶の表情を浮かべる彼女。腰まで飲み込まれたところでおもむろに立ち上がると、ヘビが彼女を半ば飲み込んだ状態で頭をもたげたようになる。もちろん観客へよく見えるように計算された演技である。そのまま、ゆっくりと飲み込まれ、やがて、彼女の肩までがすっぽりと飲みこまれてしまう。ヘビの口から彼女の頭だけが生えているような状態で、ふたたびステージに横たわる。ステージ上には、1人の女の子を肩まで飲み込んで、その形に膨らんだビニールの作り物のヘビが、胴体をくねらせながら、獲物をさらに体内の奥へ奥へと運び込もうとしている。その口からかろうじて頭だけをのぞかせている女の子は、顔に苦悶の表情を浮かべながらも、抑えきれない愉悦の表情が混じりあい、上気したように顔を赤らめている。  褐色のビニールのヘビは薄っすらと中が透けて見える程度の半透明なので、飲み込まれている彼女の様子は、観客からもおぼろに見える。ヘビの体内で、足をばたつかせ、腰をくねらせて、飲み込まれまいと必死に抗っている彼女は肢体は、まるでヘビの体をまとって自慰をしているかのようにエロティックだ。顔を観客の方に向けながら、じわじわとヘビの口の中に飲み込まれていく彼女の頭。既に胴体に入れた自分の体をくねらせることで、体内に潜りこんでいるのだろう。器用なものだ。  そして、とうとう絶望と恍惚の表情を浮かべながら、彼女の顔が作り物のヘビの口の中に、完全に消えていく。

【挿絵】スネーク・TF・エスケープ2

――哀れヘビに丸呑みにされてしまった彼女の運命やいかに!?奇跡の脱出はありえるのでしょうか!!――  観客からはヘビの体内に透けてみえるピンク色の女の子の体がゆっくりと胴体の奥へと送り込まれている様子が見える。苦しさのあまり、のたうって抵抗している様子が観客の興をそそる。ビニールのヘビの全長は、彼女の2倍ほどはある大きなもので、飲み込まれて体内にいる彼女がどうやってそのヘビを動かしているのかは、想像できないが、それこそがパフォーマンスの神髄なのだろう。なんと、作り物のヘビはカラダをうねらせ、頭をもたげて観客の方を向けて、お辞儀のまね事までやってのけた。  その不思議さに観客からは拍手が起こる。それはヘビの体のほぼ中央まで達した彼女に向けられたものか、あるいはその生命無きヘビに向けられたものなのか。観客の次の関心は、体内の彼女がどうやってそのヘビのお腹の中から脱出するか、ということだろう。  お腹を切り開いて脱出するのか、体をさかのぼって再びヘビの口から姿を見せるのか、あるいはもっとビックリするような方法か。  観客の方を向いていたヘビのガラスの瞳が妖しく輝き、ビクッとヘビ自体が痙攣するように震える。すると、ヘビの胃袋に収まっている彼女も一緒にビクリと震え、苦しそうにカラダをねじる。立て続けにビクンビクンとヘビがそのビニールの胴体を震わせると、透けて見えているピンク色の彼女の体は、彼女以外の何かの力が働いているかのように、あらぬ方向に折れ曲がり、押し潰され、こねくり回される。ヘビの胃袋の中で踊らされている彼女の体は、手足も頭も見分けのつかない塊へと変化していき、さらに胴体が収縮を繰り返すと、その塊は徐々に小さくなっていった。やがて胴体の中に見えるのは、ピンク色のバスケットボール大の塊のようなモノだけになり、もうピクリとも動かなくなった。  シーンと静まり返った観客の見守る中で、獲物の消化を終えたヘビは、満足そうにゆっくりと移動し始めた。そのビニールの胴体の中央に収まっていたピンク色の塊は、ヘビの体内の後方へ、少しずつ絞りだされるように動いているのが見えた。作り物のヘビは、生命を得たかのように、自在に床の上を滑りながら移動し、ステージから退場していく。ステージの中央には、たった今、ヘビの体内からひり出されたモノが、ライトを浴びて観客の好機の視線に晒されていた。それはほんの数分前まで、パフォーマンスをしていた女の子が着ていたキャットスーツと同じピンク色のエナメル素材をまとった、しかし、彼女とは似ても似つかない、不定形な棒のような、つまりはヘビの排泄物となった姿だった。  どう反応してよいのか困惑している観客にナレーションの声が届く。 ――ヘビに飲みこまれ、ウンコになって見事脱出!!カラダを張った一世一代の変体イリュージョンでした!――